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森一敏
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 08.2月個人政務調査(行政視察) 
(2008年2月12日〜14日)

埼玉県 東松山市 ノーマライゼーションの理念に基づく教育
大阪府 堺市    国際化推進基本指針、推進計画

  東松山市、堺市への行政視察を報告します。
 「差別を排する、違いを認め、共に生きる」という基本理念において両市の施策は共通するものがあります。 
 
 まず、東松山市ですが、視察のテーマは、「ノーマライゼーションの理念に基づく教育」です。

 東松山市は、埼玉県のほぼ中央部に位置する比企丘陵にあります。人口9万人。街はこじんまりと閑静にたたずんでいますが、工業団地をもち、税収は比較的豊かと言います。私は、過去三度原爆の図が展示される丸木美術館を訪問していますが、ほんとに田舎を感じさせる東京のベッドタウンなのです。昼食に立ち寄った駅前の小さなそば屋さんで、市役所の道順を尋ねると、お客さんまで親切に身振りを交えて案内して下さいました。人情を感じて視察をスタートしました。
 「生活重視・福祉優先」を掲げるこの東松山市では、昨年の4月から「子どもが平らに教育を受ける権利」を保障する制度として、従来あった就学指導委員会を廃止しました。就学指導委員会とは、子どもが小学校に入学する際に知能検査をはじめとする就学時健康診断の結果などをもとに、子どもの就学先を指導する機関です。これが、障害のある子と健常の子を振り分ける機能を果たしてきたわけです。 統合教育とか包含教育と訳されるインクルージョンが、世界の趨勢であると言われる中、障害のある子をもつ保護者が、我が子が地域の学校で共に生き、学べるように就学時の本人・保護者の意思の尊重を求める運動が金沢でも行われてきました。そのシステムのキー機関である就学指導委員会を廃止するという施策転換には、全国から注目されました。
 12日午後、市役所を訪ね、市教委の関口指導主事からこの間の経過や現在の制度、手続き等について詳しいお話を伺いました。東松山市教委は、2007年3月をもって就学指導委員会を廃止し、4月から7月まで就学支援委員会を設置、それ以降は、新たに就学相談調整会議を設置して就学相談委員会も廃止しました。名前の通り、東松山市教委は、保護者に就学に関する情報提供を行い、就学先を保護者が決定するための相談活動に転換したのです。
 就学相談調整会議には、専門医、臨床心理士、有識者、各学校一人の教育関係者(管理職、教諭)、保護者の代表からなる30人の就学相談調整員が共に育ち、共に学ぶ教育を推進する(「東松山市就学相談に関する規則」)ための情報交換、保護者への情報提供を行うための調整活動を行います。これとは別に就学相談相談員が、17人配置され、個別のケースで相談に応じる仕組みになっています。
 校長会に出された資料によれば、変更点として「就学先の判定をしない制度」との記載があります。ここに、このシステムの核心があるのです。この転換を主導した坂本祐之輔市長に表敬訪問してきましたが、市長は明快でした。「生活重視・福祉優先の施策ですから、子どもたちを分けないんです。」市長は3期目に入っていますが、32才で市議となって初めて障害のある人々の存在を知り、福祉社会で排除されるのはおかしいと考えるようになったそうです。4年前から共生共学の方向性を打ち出し、昨年思い切って就学指導委員会の廃止に踏み切ったと言われました。英断です。拍手です!!
 ただ、この坂本市長の明快な決断と比べると、教育委員会は、県教委から指導をうける立場もあって、今ひとつ歯切れが悪い印象が残りました。期待が大きすぎたということでしょうか。まず、就学時健康診断を継続している。次には、障害児学級(特別支援学級)の設置をもって地域の学校に就学する方式がかなりの比率である。就学相談調整会議は就学先判定はしないものの、いわゆる「専門教育」への選択をも尊重するという形で、校内で分かれて就学する道を残していること。批判するわけではありません。福祉と教育の間に、坂本市政と言えども完全撤廃できない価値観の隔たりがあるということなのです。その背景に日本の教育制度の別学体制が作用しているということなのです。そのことをこの視察を通じて改めて認識させられました。
 しかし、その制約の中で、どの地方教委もやらなかった転換を実行した東松山市には、敬意を表しますし、金沢も「就学相談を行う就学指導委員会」などという中途半端な体制からきっぱりと脱却しなければなりません。一昨年末近くに国連で「障害者の権利条約」が採択されて、インクルージョン教育が世界のベクトルとなる日が近いのです。分けられないで生きる権利を保障することが当たり前の時代が来ようとしているのですから。

 ところで、予算最終査定の合間を縫って、表敬訪問を受けて下さった坂本祐之輔市長は、一見してナイスガイという表現がぴたりとはまるダンディマンでした。彼のホームページにアクセスしてみました。納得しました。市長としての人気は絶大であるようでした。

 
 東松山市から戻って12日は東京で宿泊し、翌日は、新幹線に乗って大阪府堺市へと移動しました。堺市は昨年4月に合併によって80万人規模の政令指定都市に生まれ変わりました。旧堺市の時代から職員採用に国籍条項を撤廃してきた堺市は、ユネスコが唱道する反人種差別・差別撤廃国際都市連合への加盟を全国最初に検討しています。視察テーマは「国際化施策へのとりくみ」です。
 昨日からの寒波で、京都辺りでも吹雪となり、さすがの南大阪堺市も寒風が吹きすさんでいました。高層近代建築の堺市役所は、南海電鉄堺東駅からすぐの所でした。見上げる庁舎に入り、議会事務局に訪問のあいさつを行いました。
 市長公室国際文化部国際課の渋谷課長補佐と仲田主査が施策の説明にあたって下さいました。間もなく議会が始まる忙しい時期での視察に丁寧に応えて下さり感謝でした。
 さて、堺市の国際化施策は、1993年度に策定した「堺市国際化基本指針」にもとづいて1996年度に立案された堺市国際化関連実施施策を踏まえ、新たに今年度策定される堺市国際化推進計画(現在は素案)によって、また大きな一歩を進めるというものでした。
 推進計画にある4つの基本戦略は、一にオンリーワンの歴史文化をいかした国際交流の展開。中近世のアジア交易圏の共同研究、ポルトガル、オランダなどとのテーマ型都市間交流。
 二つに、多様な連携を生み出す国際的機能の整備。国際的コンベンション誘致、国際機関の誘致にもチャレンジします。
 第三には、堺の独自性のある国際協力の推進。これはユニークです。世界平和と人権尊重への貢献が目指されます。具体として、国際平和貢献賞の創設顕彰、国連活動への支援、NPOと連携してのサイクルエイド事業(中古自転車の提供による支援プログラムだそうです)への参加、
 そして第四には、国際性豊かな多文化共生社会の形成です。子どもたちの国際理解の強化、外国人住民が暮らしやすい多文化共生社会づくりを目指します。これらには、海外交易の拠点としてのルーツをもつ堺市が、まちのアイデンティティを国際化にもとめ、そのステータスを押し上げようとする戦略指向であると理解しました。

 金沢市でも行われている施策はもちろんありますが、私が注目するのは、国際的平和人権貢献と外国人市民のくらしを見据えての多文化共生が基本戦略の中にしっかりと位置づけられている点です。反人種差別・差別撤廃国際都市連合(07年に改称「包括的な社会と差別撤廃を目指すアジア・太平洋都市連合」)への加盟検討は、タイのバンコク市からの誘いから始まったようですが、世界貢献と「足元の国際化」の方向性から導き出されているように思います。検討中案件とあって、国際課からは詳しい話は聴けなかったのが残念でしたが、先行して行った国籍条項撤廃が、朝鮮植民地支配に由来する特別永住者の反差別闘争を背景として踏み切られたものであるなら、今新たに国際化というステージの中に置き直され、世界との連帯の中で豊富化しようと考えられているように思います。金沢港をアジアとの人とものの交流拠点にしようと県と共に投資を行い、党派を問わずアジアからの観光客誘致を言い募るようになった金沢市なら、そして世界都市を標榜する金沢市なら、この足元の課題は避けては通れません。

 国籍条項撤廃の内実がどのように運用されているのか、反人種差別・差別撤廃国際都市連合への加盟検討はいかなる議論をともなって進められているのか、追加的に資料を送って頂く約束になっています。それらを精査し、質問に生かしたいと予定しています。

 金沢市では、この多文化共生に、市民運動と行政がタイアップする形でとりくんでいますが、その基盤として機能している国際交流財団が、まだ堺市にはないという意外な話も聞きました。財団設立についても、財政費用対効果を見極めながら検討を行っているとのことでした。金沢市にも芽生えた多文化共生の営みを大切に育み、外国人市民に対する差別なき世界都市金沢に向かってパワーアップしたいものです。金沢で活動する方々と、視察結果についていろいろと議論できたらと思っています。


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